ジューサーの冬眠。

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家族に「これ邪魔なんだけど」と、片付けるように言われ、なんだなんだと見て、固まった。ジューサー。数年前に爆発的に広まったスムージーを作るべく、流行りに全力で乗っかって買ったものである。
数回使って、すぐに置物と化したシロモノだ。
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 言い訳をさせてほしい。

まず、積極的にスムージーを飲もうというのが、家族の中で私ひとりきりだったのがまずかった。
大体のスムージーレシピでは、野菜や果物が複数種類入る。ヨーグルトなども入ったりする。それぞれの材料を少しずつにしたとしても、結構な分量になる。
初めてのスムージーは、二人前という言葉を信じて作ったが、ビールジョッキ二杯分よりさらに多かった。飲んでみようか、という気持ちになった家族の心を「やっぱりいらない」に変えるには充分なインパクトだった。
まずくはない。美味しかった。
バナナ、ヨーグルトと牛乳、蜂蜜。間違いようのない組み合わせのレシピを選んだのだから、当然だ。
しかし、この分量を飲むと、朝食はほとんど食べられない。胃の中でスムージーがタプタブ揺れる。そのくせ、十時には空腹でグーグー腹が鳴る。消化がいいのだ。

二日目、家族は誰もスムージーを飲みたいとは言わなかった。
私は分量を半分以下に減らし、スムージーを作った。それでもビールジョッキにたっぷりと出来上がったそれを飲み干して、さらに朝食を食べることはできなかった。腹の音は、やはり十時には鳴り始めた。

三日目には、もうだいぶ心は折れていた。それでもすでに下ごしらえしてしまっていた食材を使い切るためにスムージーをこしらえた。

スムージー用の果物を使いきった四日目以降の話は、もう必要ないだろう。

毎朝使うのだからと思って買ったジューサーは、トースターの横に置いていた。よく見る場所だけに、確かに邪魔に見えるかもしれない。
私はジューサーをそっと箱に入れ、戸棚にしまった。
またいつか、スムージーに挑戦しようと思える日が来るまで、ジューサーには静かに眠っていてもらうつもりである。